はじめに
近年、種々の電気・電子機器の普及等により、電磁界が人体におよぼす影響についての関心が世界的に高まってきた。また、これまでにも磁界暴露が細胞内メカニズムに影響を及ぼすという報告が数多く発表されてきた。しかし、磁界暴露の生体作用メカニズムは未だ解明されていない。これまでに本研究では骨芽細胞を用いてその分化に及ぼす磁界の影響を調べたところ、磁界暴露により分化が促進されることが分かった。今回はラット副腎髄質褐色細胞腫PC12細胞を用い、その分化に対する磁界の影響を調べた。
図1に今回用いた磁界発生装置を示す。ソレノイド型コイルを上下垂直に配置し、細胞に対して垂直に磁界を作用させた。また、磁界発生装置内に恒温水を循環させ、細胞を常に37.0±0.2[℃]に保った。さらに曝磁中もpHを一定に保つため、図2に示すような保温用インキュベータ内に細胞入りのシャーレを入れ、曝磁を行った。
2〜3日間CO2培養装置で培養した後、曝磁開始前にPC12細胞の突起を誘導する薬剤として知られているNerve growth factor (NGF)とdibutyryl cyclic AMP (dbcAMP)を細胞に添加し、60[Hz], 3[mT]のELF磁界にて72時間まで曝磁した。曝磁終了後に細胞の形態を顕微鏡にて観測するとともに、細胞内のドーパミン量も測定した。
今回PC12細胞の分化を、以下のような方法により評価をおこなった。
今回、ラット副腎髄質褐色細胞腫PC12細胞を用いてその分化に対する磁界の影響を調べたところ、NGFを添加した細胞においてはすべての計測時間において対照群に比べて曝磁群の方が突起の伸びが促進された。また、dbcAMPを添加した細胞においては、短時間の曝磁時間においては対照群と曝磁群の間で突起の長さに有意な差がみられたが、長時間の曝磁においては有意な差はみられなかった。
質疑応答
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