緒言,磁性アタッチメントの装着   考察,まとめ
磁性アタッチメントによるアレルギーが疑われた一例

  アレルギー症状と経過

 

 最初に磁性アタッチメントを取り付けた時点および次回来院時もアレルギー症状についての患者からの訴えはなかった.しかしながら,患者は平成7年5頃よりひざの裏に蕁麻疹が出現し,その後全身にも出現したため岐阜大学医学部皮膚科を受診していた.
 皮膚科での診断名は斑状紅斑であり,パッチテストの結果,塩化パラジウム1%,塩化金酸0.2%,塩化第2スズ1%,塩化第2鉄2%,塩化白金酸0.5%,塩化亜鉛2%に陽性を示したが,強陽性を示すものはなかった.患者は9月より同科にて入院し,以下のような内服薬,外用薬,静注および皮下注処置を受け,やや症状は改善した.
      内服:ホモクロミン、アゼプチン、コルヒチン
      外用:ネリゾナ
      静注:強力ミノファーゲンC、タチオン、クロールトリメトン    
      皮下注:ヒスタグロビン、ノイロトロピン
 退院後もステロイド系軟膏の塗布,ホモクロミン,インタールを内服しており,初発の状態よりは経過はよいものの完治ではなかった.
 皮膚科主治医より口腔内に装着された磁性アタッチメントの金属によるアレルギーの可能性が指摘され,磁性アタッチメントのパッチテストを実施してもらった.その結果,ハイコレックス・スーパーJではキーパー,磁石構造体とも(−)であったが,マグフィット400Sのキーパーは(±),マグフィット400Sの磁石構造体は48時間後のみ(+)であった.皮膚科主治医によれば,この結果のみで蕁麻疹の原因と確定するには不十分とのことであった.アレルギー症状が強いことから,患者の希望によりキーパーを平成9年1に除去した.
図9
除去した後はコンポジットレジンにより充填した(図9).また,外冠から磁石構造体を除去し,外冠内面に常温重合レジンを充填した(図10,11).

図10
図11

その後,全身のかゆみについては大きな変化はなかったが,平成9年5のリコール時にあった掌蹠膿疱症は平成9年6のリコール時には消失していた.
 一方,血液検査,血液化学検査,免疫血清検査の結果では異常所見はなかった.特に,主要なアレルギー疾患多くに関与する重要な抗体の免疫グロブリンIgEは122.6で正常値の境界値である500以下であった.
 現在,磁性アタッチメント除去後3

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